赤羽——ひとことで言えば、埼玉と東京の境界で生きる、コスパと活気の北区代表の街だ。
東京北部最大のターミナル駅でありながら、高級感はゼロ。飲み屋の数だけは23区トップクラスで、乗り換えの利便性は都内有数だが、街の雰囲気は北千住と双璧を成すギラついた空気が漂う。住めば便利、歩けばうるさい。それが赤羽の姿だ。
「どんな街に住むか」を考えるとき、きれいごとを並べた記事は役に立たない。赤羽は「住みやすい街」ランキングに顔を出すこともあるが、その前に言っておく——この街には向き不向きが明確に存在する。
こんな人に向いている/向いていない
向いている人
- 最寄駅で飲み歩きたい人。居酒屋の絶対数では北区随一だ
- JRでの移動が多い人。山手線・埼京線・高崎線・宇都宮線・湘南新宿ラインが使える
- 大宮・浦和方面に用事が多い人。埼玉への玄関口として機能する
- 活気がある街に慣れている人。静かな夜は望めないが、街の熱量は十分だ
- 体力があって自転車を使える人。西口側の生活圏は坂が多いが慣れれば快適
向いていない人
- 閑静な住環境を求める人。繁華街の喧騒が一定の半径で続く
- メトロ沿線への移動が主な人。赤羽岩淵から南北線が出るが、駅から徒歩がある
- 神奈川・横浜方面に住みたい人。湘南新宿ラインを逆に使う発想がないなら北向きの街だ
- 家賃を23区内で最小化したい人。アクセスの良さが家賃に反映されており、穴場駅ではない点に注意が必要
数字で見る赤羽
| 指標 | 赤羽のデータ | 参考 |
|---|---|---|
| 乗車人員(JR赤羽駅) | 約94,167人/日(2024年度) | JR東日本 全駅中35位 |
| ワンルーム家賃相場 | 6.3万円 | 23区平均 約7〜8万円 |
| 1LDK家賃相場 | 約10万円 | 同上 |
| 刑法犯認知件数(赤羽警察署管轄) | 911件(2023年) | 2021年789件→増加傾向 |
| 高齢化率(赤羽西・東の一部) | 50%超の町丁あり | 北区全体平均 約26% |
乗車人員94,167人は乗降合計で約18.8万人/日に相当する。これはJR東日本単独駅の中でも上位水準で、「なんとなく賑やかそう」というイメージが数値でも裏付けられている。
家賃は意外にも東京23区の平均より若干低い水準に収まっており、アクセスの良さを考えると割安感はある。ただし板橋区の高島平・志村エリアと比較すると2〜3万円高く、「コスパが良い」とは一概には言えない。
高齢化率については、赤羽西・赤羽東の一部町丁では50%を超えるデータもあり、駅前の繁華街の活気とは対照的に、住宅街では静かに高齢化が進んでいる。
家賃相場について、自分のこだわりの条件で探した場合には値段が上下するため、あくまでも偏差値的な見方をするのがおすすめだ。僕の個人的な基準で言うと赤羽に住むには8万は覚悟していた。もしくは北千住のときと同様15分くらい離れたエリアで7万円を狙うか、といったところだ。昨今の物価高が家賃にも反映されてきているので今後はもう少し上がるかもしれない。
交通・アクセス
鉄道
| 路線 | 主な行先 | 所要時間目安 |
|---|---|---|
| JR京浜東北線 | 上野 | 約16分 |
| JR京浜東北線 | 東京 | 約25分 |
| JR埼京線 | 新宿 | 約22分 |
| JR埼京線 | 渋谷 | 約27分 |
| JR宇都宮線・高崎線 | 大宮 | 約15分 |
| JR湘南新宿ライン | 横浜 | 約50分 |
| 東京メトロ南北線(赤羽岩淵駅) | 六本木一丁目 | 約26分 |
| 東京メトロ南北線(赤羽岩淵駅) | 目黒 | 約38分 |
赤羽最大の武器はJR複数路線の集結だ。高崎線・宇都宮線・湘南新宿ライン・京浜東北線・埼京線がすべて停車し、新宿・上野・大宮の三方向へ乗り換えなしで動ける。これだけのアクセスが得られる北区の駅は赤羽しかない。
見落とされがちなのが赤羽岩淵駅だ。赤羽駅西口から北へ徒歩約10分、東京メトロ南北線の始発駅で、六本木・麻布十番・目黒まで一本でつながる。正直、この駅の知名度はアクセスの良さに対して低すぎる。JR一本足の赤羽の補完として機能しており、西口北部に住む場合は南北線も選択肢に入ってくる。
なお南北線は埼玉高速鉄道に直通しており、ここでも埼玉との縁がしっかり続く。赤羽は地理的にも路線的にも、埼玉の玄関口と言って差し支えない。
ただ、ファミリー層の多いのどかさをとって西口に住むと、赤羽岩淵駅は少し遠くなる。駅間の距離は徒歩で10分程度ある。
僕は電車の乗り換えで雑踏を移動するのが大嫌いなので、多少離れていても複数駅を使えるのがプラスポイントになる。自転車を使ってもいいし、徒歩で別駅までの街の雰囲気や新たな発見をするのもよい。
道路・バス
環状線の環七・環八が西側で合流する位置にあり、都心を迂回したルートが確保できる。車での都心方向は板橋ICから首都高に乗る形になるため、中野・新宿方面へは手間かかるが、物理的な距離を考えると許容範囲だ。ただ神奈川方面へ頻繁にドライブをする場合はICがすぐそばにないことがボディブローのように不満の蓄積になるのかもとも思った。
バスは西口からの路線が充実しており、高島平・桐ヶ丘・王子方面への動線がある。西口の坂道エリアに住む場合はバスとの併用が現実的だ。
また用途は限られるが、西新井にもバスが出ているので足立方面へ出ているので西新井大師にお参りに行くこともできそうだ。北千住に住んでいたときは初詣も西新井大師に行っていたが、関東三大師の一つを行きつけの寺院にするのもなかなか気分がよかった。
これも僕にとってはポイントは高く、バスで本来結ばれていない方面へ導線があると選択肢が大幅に広がる。帰宅に住んだのに足立区も感じるとができると言うのは僕のような散歩好きには加点要素だ。
買い物・飲食・商業施設
スーパー・日用品
西口正面のイトーヨーカ堂(赤羽店)を核に、ユニクロ・サイゼリヤ・ガストが同ビルに入っている。ファミリー層の日用品はほぼここで完結する。東口側にもまいばすけっと・マルエツが点在しており、食材調達の利便性は高い。
飲食店・外食事情
赤羽の顔は東口北側の歓楽街だ。「赤羽一番街」を中心とした立ち飲み・居酒屋の集積は都内でも随一で、昼飲みOKの店も多い。価格帯は1,500〜2,500円/人が中心で、新宿・渋谷と比べると明らかに安い。大宮や浦和方面の友人と集合する場所として赤羽を選ぶのは、このコストパフォーマンスによるところが大きい。一時期はセンベロの街とも言われたが物価高の煽りで死語になりそうではあるが。
西口はチェーン飲食と個人店が混在する落ち着いた雰囲気。昼食1,000円以下で食べられる選択肢が多く、働く人向けの価格帯だ。
商店街・その他
東口の赤羽一番街商店街・赤羽銀座商店街が現役で機能しており、八百屋・精肉店など個人商店も残っている。ドラッグストアはウエルシア・マツモトキヨシが複数あり、日用品・薬の調達には困らない。
また、繁華街の位置が赤羽岩淵との間に形成されているので、南北線ユーザーとの飲み会にもうまく使える点は覚えておきたい。
治安・災害リスク
治安データ
| 指標 | 赤羽(北区) | 新宿区 |
|---|---|---|
| 刑法犯認知件数(警察署管轄) | 911件(赤羽署・2023年) | 約3,577件(新宿署・2024年) |
| 区全体の犯罪発生率 | 約0.5%(北区) | 約1.7%(新宿区) |
| 推移 | 2021年789件を底に増加傾向 | 2020年2,604件から増加傾向 |
| 区内での位置づけ | 赤羽署管内は北区内ワースト | 新宿区は23区中で最多水準 |
治安について正直に言う——赤羽は東京23区の中で「良い」部類には入らない。北区内でワーストは赤羽駅周辺で、繁華街がある以上これは構造的な問題だ。ただし夜に歩いて怖い思いをする水準かと言えば、そこまではない。日常的に飲み歩くような暮らしをしている分には、単純な数値ほどの危険は感じない。
問題は2021年を底に犯罪件数が増加に転じている点だ。飲み屋街が密集するエリアからある程度距離をとった住居を選ぶことが、現実的な対策になる。
新宿と並べると数字の重さが変わる。新宿警察署管内の認知件数は赤羽署の約4倍、区全体の犯罪発生率は北区の3倍を超え、新宿区は23区中で最多水準に位置する。「赤羽は北区内でワースト」という事実と「新宿よりははるかにおとなしい」という事実は、両方同時に成立する。
深夜の赤羽一番街周辺は、日本の繁華街としては標準的な騒がしさだ。刺激に慣れていない人にはきつく映るかもしれないが、新宿・上野と比べてとりわけ危険というわけでもない。問題はコアの飲み屋街から外れた細い路地に入ったときで、そこはさすがに夜間は慎重に。
災害リスク
西口側の台地・丘陵エリア(赤羽台・桐ヶ丘など)は水害リスクが低く、地盤も比較的安定している。一方、東口側は新河岸川が隅田川に変わる岩淵水門付近まで続く低地で、荒川・隅田川の氾濫リスクが北区洪水ハザードマップで明示されている。坂が多いのは不便なポイントでもあるが、
東口近辺や川沿いを検討する場合は、北区防災ポータルサイトのハザードマップを必ず確認してほしい。荒川が氾濫した場合の浸水想定深は東口周辺で2〜3m超の区域もある。
エリアごとの違い
西口側(赤羽台・桐ヶ丘・岩淵方面)
西口を出て少し進むと、「〇〇台」「〇〇丘」の地名が増える。赤羽台・桐ヶ丘など、典型的な丘陵地帯の住宅地が広がっており、坂道は本物だ。自転車で板橋・高島平方面から赤羽へ移動していた時期があるが、運動部出身が条件になるレベルの立ち漕ぎを要求される。
住民はファミリー層が中心で、西口は治安面でも落ち着いている。ちなみにひろゆき(2ちゃんねる創設者)はこのエリアの桐ヶ丘団地出身を公言しており、かつての公団住宅エリアとしての側面もある。
赤羽岩淵駅へのアクセスも西口北部からの方が近く、南北線との組み合わせで都心移動の幅が広がる。
東口側(赤羽一番街・岩淵水門方面)
東口は飲み屋街の中心地で、赤羽の「ギラついた顔」が全開になる。岩渕水門方面へ進むと低地の業務エリアに続き、トラックが行き交う幹線道路の印象が強い。川沿いの景観は悪くないが、南北線沿いの駅周辺は殺風景で、居住環境としての魅力は西口に劣る。
繁華街に近い分、夜の環境への耐性が問われる。騒音・人の往来が許容できるなら、駅近物件を安く押さえるという選択肢はある。
筆者の結論:結局赤羽はどんな街か
赤羽は「便利だが洗練されていない街」だ。これをポジティブに言えば「使い勝手が良くてコストが低い」、ネガティブに言えば「品はない」になる。北千住に対して感じるものと同じ印象をこの街にも持っている——実際によく似ている。
JRの集結ポイントとして都内アクセスは申し分ないが、後ろを振り返ると埼玉が広がっている。これは地理的事実だが、赤羽に住む人の属性にも反映されている。埼玉出身で東京に出てきた人間、仕事場は東京だが家賃は抑えたい人間、そういう層が多く集まるエリアだ。僕自身、新卒のときに北千住か赤羽かで迷った経験がある。
飲み屋の充実度は本物で、近所で飲み歩く生活を重視するなら東京でトップクラスの選択肢だ。逆に静かな住環境を優先するなら、同じ予算で板橋や高島平を選んだほうが合理的だ。
治安は繁華街としてはやむを得ない水準だが、住む場所を東口の飲み屋街から一定の距離をとれば、日常生活で問題になる場面はほぼない。若い年代であれば街の活力を享受できるが、落ち着いた暮らしを求めるフェーズでは住み替えを考えることになるだろう。
西口の坂については本当に覚悟が必要だ。体力がある人間には逆に住み心地が良いが、自転車通勤やベビーカーを考えている人は事前に実地で確認してほしい。
くろしば個人評価:★★★★☆
赤羽は「東京の入口」だ。洗練はないが活力がある。コスパは良いが坂がある。便利だが埼玉に近い。すべてがセットになって「赤羽」という街が成立している。
よくある質問
Q. 赤羽の家賃相場はどのくらい?
A. ワンルームで6.3万円前後、1LDKで10万円前後が目安だ。23区平均よりやや低い水準で、アクセスの良さを考えるとコストパフォーマンスは悪くない。ただし板橋・高島平エリアと比べると2〜3万円高くなる。
Q. 赤羽の治安は良い?
A. 良いとは言えない。北区内で最も犯罪件数が多い駅周辺エリアであり、繁華街に近い東口は夜間の雰囲気に慣れが必要だ。ただし日本全体で見れば危険度が高い水準ではなく、住む場所の選び方で体感は大きく変わる。
Q. 赤羽は一人暮らしに向いている?
A. 「飲み歩きが好きで、JRで都心・埼玉双方に移動する」人には向いている。家賃・交通・飲食のトータルコストは優秀だ。逆に静かな環境で暮らしたい、またはメトロ沿線への移動が主な人には他の選択肢を検討したほうがいい。
あわせて読みたい


