中野富士見町をひとことで言えば、新宿をかなり近く使える、近郊の便利さに全振りした地味な街だ。
執筆現在僕が4年以上すみ続けている街なので、詳しく紹介できると思う。
丸ノ内線の支線駅なので、中野坂上での乗り換えを前提に動く場面は多い。駅前の商業も強くない。ただ、その代わりに新宿へ出る自由度は高く、南へ下れば幡ヶ谷や笹塚も生活圏に入る。駅力は弱いのに、都心の使い勝手はいい。このねじれが中野富士見町の正体だ。
家賃そのものは安くないが、この立地、利便性でこの値段ならいいだろう、と納得できる。この記事では、町丁目単位の人口・治安データと、実際の街の空気を分けながら、中野富士見町がどんな人に向く街なのかをはっきり書く。
こんな人に向いている/向いていない
向いている人
- 最寄り駅に華は求めず、新宿を日常使いしたい人
- 中野坂上での乗り換えを許容できる人
- 幡ヶ谷、笹塚も含めて複数駅を使い分けたい人
- 日用品と食料品さえ揃えば、あとは都心へ出ればいいと割り切れる人
- 落ち着いた住宅地に住みたいが、都心からは離れたくない人
中野富士見町の良さは、駅前の派手さではなく移動の自由度だ。最寄り駅だけで街が完結するタイプではないが、新宿方面への強さと周辺駅の使い分けまで含めると、生活はかなり組みやすい。
向いていない人
- 主要駅まで毎回乗り換えなしで行きたい人
- 最寄り駅の周りに外食やカフェの選択肢を求める人
- 家賃の絶対額が安い街を探している人
- 駅前に大型商業施設やわかりやすい便利さが欲しい人
- 築古か高額新築かの二極化を避けたいファミリー
中野富士見町は、便利な街というより「動きやすい街」だ。駅前の機能だけを見るとポンコツ感が否めない。だから、街の評価は交通の使い方次第でかなり変わる。
数字で見る中野富士見町
| 指標 | 中野富士見町のデータ | 参考 |
|---|---|---|
| 駅徒歩圏人口 | 12,723人 | 中野区 343,794人 |
| 15〜64歳比率 | 73.3% | 中野区 71.9% |
| 65歳以上比率 | 19.4% | 中野区 19.7% |
| 中野富士見町駅の1日平均乗降人員 | 19,307人(2024年度) | 中野新橋 20,570人、方南町 40,171人 |
| 家賃相場 | ワンルーム 11.2万円、1K 11.3万円 | 1LDK 17.3万円、2LDK 20.3万円 |
数字で見ると、中野富士見町は若い単身・DINKS寄りの住宅地だ。駅徒歩圏の近似として本町五丁目、弥生町四丁目、弥生町五丁目、南台一丁目を合算すると、人口は1万2723人。15〜64歳比率は73.3%で中野区平均より高く、0〜14歳比率は7.4%にとどまる。子どもが極端に多い街ではなく、働く世代中心の静かな住宅地と見るのが近い。ただ保育園や小学校も多く、近くのエリアでは時間帯によっては子供も多く目につく。僕自身がDouble Income Double Kidsで暮らしているので特に目が生きやすいということもあるかもしれない。
しかもこの4町丁目の人口は前年から2.4%増えている。新宿近接の割に駅前が騒がしくないこと、丸ノ内線支線と周辺駅の使い分けができることが、着実に需要を集めていると読める。住んで見て思うのは確かにすみやすい。僕が今まで激推ししてきた武蔵小杉を超える住みやすさかもしれない。
一方で、駅の規模は小さい。東京メトロの2024年度1日平均乗降人員は1万9307人で、中野新橋より少なく、方南町の半分以下だ。つまり、中野富士見町は「駅前で全部済む駅」ではない。ここを使う人は、駅前の強さより住む場所としての静けさと都心への近さを買っている。駅前の様子は丸の内線沿線全体に言えることだが、しょぼいことが多い。これは戦前の国鉄時代から街を築き上げてきた中央線に対して、80年ほど遅れて中央線のバイパスとして開通した新宿以西の丸ノ内線の宿命だ。正直駅前とは気がつかないレベルの発展具合の駅もある。新中野は車で青梅街道を通過してもどこに駅があったか気がづくにはよっぽど注意していなければならない。
家賃も安くはない。SUUMOの相場ではワンルーム11.2万円、1K11.3万円だ。支線駅だから安いだろうと期待すると外す。ただ、新宿寄りでこの静けさを取れるなら、価格に対する納得感はある。
注意: 駅単位の公式人口統計はないため、本町五丁目・弥生町四丁目・弥生町五丁目・南台一丁目を駅徒歩圏の近似として使用している。
出典: 中野区統計書 令和8年(2026年)、東京メトロ 中野富士見町駅、東京メトロ 中野新橋駅、東京メトロ 方南町駅、SUUMO 中野富士見町駅の賃貸マンション家賃相場
交通・アクセス
鉄道
| 路線 | 主要駅への所要時間の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 東京メトロ丸ノ内線方南町支線 | 新宿はかなり近い。池袋・東京も30分前後で届く | 中野坂上乗り換えが基本。池袋方面への直通列車もある |
中野富士見町の交通は、便利か不便かではなく、使い方に癖がある。丸ノ内線と聞くと都心を一本で結ぶイメージを持ちやすいが、中野富士見町は支線側なので、中野坂上での乗り換えを前提に考えたほうがいい。主要駅まで絶対に一本で行きたい人には向かない。
ただ、その欠点を差し引いても新宿方面には強い。2019年7月のダイヤ改正以降は、方南町方面から池袋方面への6両直通列車が走るようになり、支線側の使い勝手は以前よりかなり改善した。狙って乗れば都心側までそのまま行けるし、外しても中野坂上での乗り換え一回で済む。朝の通勤ラッシュ時はこの電車が多く、時刻表を確認しておけば、行き帰りに乗り換えを避けることもできる。
ちなみに支線というのは本線に対して枝分かれした、言って見ればモブキャラだ。路線記号は丸の内本線では「M」だが中野富士見町をはじめとする支線ではbranchの頭文字を付け足した「Mb」が使われている。
バス・その他
鉄道以上に見落とされやすいのがバスだ。駅近くの中野車庫から新宿駅西口方面へ向かう京王バス 宿45 が出ており、2026年4月改正の平日朝は数分おきに便がある。家を出てから「今日は地下鉄にするか、バスにするか」を決められるのは、この街のかなり大きな強みだ。
さらに南側に住むなら、幡ヶ谷や笹塚を徒歩や自転車で使う選択肢も見えてくる。最寄り駅だけを見ると弱いが、生活圏全体で見るとむしろ自由度は高い。中野富士見町はそういう街だ。
僕の場合は渋谷に勤務している時期もあったのだが、渋谷にも直通しているバスがある。朝は道も車内も激混みで使い物にならないが、帰りはバスで帰宅する生活を送っていた。
また井の頭線の永福町にもバスが出ており、吉祥寺にお出かけをするのには、これも役だった。中野、新宿、渋谷、永福町(吉祥寺方面)、と東西南北の全方位へ移動できるのは、都心が近い街の特権ではないかと思っている。
注意: 主要駅への所要時間は時間帯と乗り継ぎ次第で変わる。ここでは日常利用のしやすさを優先して評価している。
出典: 東京メトロ 中野富士見町駅、東京メトロ 2019年7月5日 丸ノ内線ダイヤ改正、京王バス 中野車庫 宿45 新宿駅西口行き時刻表
買い物・飲食・商業施設
スーパー・日用品
日常の買い物は十分回る。駅前にはオオゼキ杉並和田店があり、帰宅途中にサクッと買い物をすませることができる。まあこれだけ都心に近い街で駅前にスーパーがないことはあり得ないが。2階にダイソーが入っているので、最低限の生活用品はかなりまとめて済ませやすい。南側の住民ならライフ南台店も使える。個人的には買い物をしていて楽しいのはオオゼキだ。肉や魚が日替わりでラインナップが微妙に変化するし、特に魚は丸の魚も多く、ビジュアル担当の高級魚もほぼ必ず並んでいる。活きた貝や海老も並んでおり、鮮魚売り場には活気がある。一方で南台のライフはファミリーパックの肉が嬉しい。オオゼキにはないので、冷蔵庫を充実させるための肉を狙って買いに行くときはライフに行くことが多い。ドラッグストアも駅前はもちろん周辺に点在しているため衣料品などもカバーできる。あとはマイバスがそこら中に配置されているので、ちょこっと買い物が必要な際にはそちらも便利に使える。
つまり、中野富士見町は食料品と日用品には困らない。ここは強い。ただし、衣服や書籍、家電量販のような買い回りは弱い。駅前で休日の用事まで完結する街ではないので、その手の買い物は笹塚、中野、新宿まで出る前提になる。
飲食店・外食事情
外食はかなり弱い。個人店もチェーンもあるにはあるが、「この駅に住んでいるから外食が楽しい」というタイプの街ではない。ぱっと食べる店はあっても、わざわざ通いたくなる店が密集しているわけではない。チェーン店は唯一松屋があるのみで、ファミリーには刺さらない。
特に弱いのがカフェだ。ちょっと座って話す、軽く作業する、待ち合わせまで時間をつぶす。この用途がかなり取りにくい。中野富士見町は住宅地としては優秀だが、駅前で余白を過ごす街ではない。交差点を渡った先の狭いモスバーガー、10分ほど歩いたところにあるジョナサンを使うほかない。僕としては切実にドトールが欲しい。
商店街・その他
駅前の便利さは最低限ある。ただ、その上積みがない。だから最寄り駅の周りを毎日楽しく使いたい人には物足りないし、生活インフラだけ揃えば十分という人にはちょうどいい。
出典: オオゼキ 杉並和田店、ライフ南台店
治安・災害リスク
治安データ
| 指標 | 数値 | 比較 |
|---|---|---|
| 駅徒歩圏の犯罪認知件数 | 39件(2025年) | 人口1,000人あたり約3.1件 |
| 本町五丁目 | 15件 | 駅北側では最多 |
| 弥生町四丁目 | 11件 | 駅西北側の住宅地 |
| 弥生町五丁目 | 9件 | 駅所在地 |
| 南台一丁目 | 4件 | 駅南側ではかなり少ない |
| 中野区全体 | 2,135件 | 人口1,000人あたり約6.2件 |
| 23区で件数最多 | 新宿区 6,977件 | 件数ベースで最多 |
| 23区で件数最少 | 文京区 1,329件 | 件数ベースで最少 |
治安はかなりいい。駅徒歩圏として集計した4町丁目の犯罪認知件数は39件で、人口1,000人あたり約3.1件。中野区全体の約6.2件を大きく下回る。飲み屋街や大規模商業地がないぶん、数字は素直に落ち着いている。これは住んでいる僕のイメージ通りだった。
実際の空気も穏やかだ。駅前に高校はあるが、街を荒らすタイプの騒がしさは薄い。夜に歩いても、怖さより住宅地の静けさが勝つ。気になるのは歩きタバコや、ごく一部のくたびれた高齢者くらいで、柄の悪さを強く感じる街ではない。多分今まで住んだ中で一番治安がいいかも。
災害リスク
防犯より注意したいのは、災害リスクが町丁目ごとにかなり違うことだ。中野区統計書の総合危険度では、弥生町五丁目が1、弥生町四丁目と南台一丁目が2、本町五丁目が3だった。同じ駅徒歩圏でも差がある。
さらに中野区ハザードマップでは、本町五丁目・弥生町五丁目・弥生町六丁目が土砂災害ハザードマップの確認対象になっている。駅自体も東京メトロの洪水時避難確保・浸水防止計画の対象駅だ。つまり中野富士見町は「治安はいいが、防災は物件ごとの差を見ないと危ない街」だ。このサイトでは度々言及しているが、川がある周辺は土地が低い。当たり前だが雨が降ったら水は盛り上がっているところからくぼんでいるところめがけて流れる。川の形は簡単には変わらないので、いまも川が流れている場所は、雨が降ったら水が貯まる場所だ。中野富士見町の場合は神田川と善福寺川が流れている。神田川は駅の真横を通過している。つまり駅周辺は水が集まる場所だ。現在都市の川は相当治水に力を入れていて、氾濫するリスクは抑えられている。しかし地盤というのは地中の地下水との距離が影響するらしいのでその辺も注意だ。駅の南北には十貫坂、南台という住所があることもわかりやすい。
夜に歩くぶんにはかなり安心感がある。一方で、古い住宅や細い道が残る区画もあり、防災面では住所の当たり外れがはっきりある。内見では最寄り駅からの近さより、接道と周囲の建物密度を見たほうがいい。
出典: 警視庁 令和7年 区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数、中野区統計書 令和8年(2026年)、中野区ハザードマップ、東京メトロ 中野富士見町駅
エリアごとの違い
北側(本町五丁目・弥生町四丁目)
駅前の利便を素直に受けやすいのは北側だ。中野坂上寄り、新中野寄りの空気が少しずつ混ざってきて、南側より都心感が出る。駅近を取りやすい一方で、家賃はやや上がりやすい。新中野が近いのは実はとても便利だ。なぜなら帰宅時に方南町行き、荻窪行きを選ばず乗流ことができる。「なんだよ荻窪行きかよ、、」と毎日思わなくて良いのはかなり大きい。
南側(南台一丁目〜笹塚・幡ヶ谷寄り)
南に下ると一気に住宅地色が強くなる。駅前の店の強さは落ちるが、笹塚や幡ヶ谷を補助線にできるので、交通の自由度はむしろ上がる。最寄り駅だけで暮らさない人なら、南側のほうがハマる。南台の地域は古民家だらけで都会の色が消え去っている地域がある。個人的にはこれはプラスポイントで、埼玉育ちの僕としては都会の喧騒のスイッチOFFができるエリアが近くに欲しい。しかし道が入り組みすぎていて今だに地図なしでは歩けない。
東西での違い
東へ行くほど山手通りと中野坂上の都心側に近づき、街の密度が上がる。西へ行くほど杉並側のベッドタウン感が強くなって落ち着く。どちらも悪くないが、「都心近接を取るか、静けさを取るか」で選び方が変わる。
中野富士見町の物件選びで厄介なのは、築浅で広さのあるファミリー物件が少ないことだ。家族で探すと、かなり古い物件か、家賃20万円超えの新しめ物件に寄りやすい。単身者には悪くないが、ファミリーは駅名だけで飛びつかないほうがいい。次の引越しも近くで考えているのだが、子供の保育園を変えずに引っ越すのが至難の業だ。一般庶民の僕にはこのエリアの真新しいファミリータイプに住むのはちょっと厳しい。。
筆者の結論:結局中野富士見町はどんな街か
結論として、中野富士見町は最寄り駅に期待しすぎなければ、かなり使える隠れ家だ。
この街の強みは、駅前の華やかさでも、乗り換えなしのわかりやすさでもない。丸ノ内線支線で新宿へ短時間で出られること、バスという逃げ道があること、南側に住めば幡ヶ谷や笹塚まで視野に入ること。この複数の交通手段が重なって、生活の自由度を底上げしている。
逆に、弱点もはっきりしている。駅前の商業は薄い。外食は弱い。カフェはかなり弱い。家賃も支線駅のイメージほど安くない。だから「最寄り駅の周りで全部完結したい」「家賃の安さを取りたい」という人には向かない。
それでも評価したいのは、治安の良さと、住宅地としての落ち着きだ。駅徒歩圏の犯罪認知件数はかなり低く、都心近接なのに街が荒れていない。しかも、弥生町五丁目のように総合危険度が低いブロックもある。防災面は町丁目や物件単位で見極める必要があるが、それをやる価値はある。
結局、中野富士見町に向いているのは「新宿を使い倒したいが、住む場所は静かなほうがいい」「最寄り駅に娯楽は不要で、生活インフラだけあればいい」「複数駅を使い分けるのが苦にならない」という人だ。反対に、駅前の便利さをそのまま住み心地だと思う人は、まず合わない。
くろしばの個人評価:★★★★★
家賃だけ見れば格安ではないが、都心アクセスの自由度まで含めると印象はかなりいい。中野富士見町は、地味だが住むと効く街だ。
よくある質問
Q. 中野富士見町の家賃相場はどのくらい?
A. 2026年4月13日更新のSUUMOでは、新築・駅徒歩1〜5分の賃貸マンション相場はワンルーム11.2万円、1K11.3万円、1LDK17.3万円、2LDK20.3万円です。支線駅だから安いとは言えません。
Q. 中野富士見町の治安は良い?
A. 良いです。駅徒歩圏の近似として集計した本町五丁目、弥生町四丁目、弥生町五丁目、南台一丁目の2025年犯罪認知件数は39件で、人口1,000人あたり約3.1件でした。中野区全体の約6.2件より低水準です。
Q. 中野富士見町は一人暮らしに向いている?
A. 向いています。新宿方面への強さ、静かな住宅地、日用品の買いやすさが揃っているからです。反対に、駅前の外食やカフェの充実を重視する人には向きません。
Q. 中野富士見町はファミリーにも向いている?
A. 住む場所を絞れば候補になりますが、単身者向けより難易度は上がります。築古物件と高額な築浅物件に分かれやすく、防災面も町丁目差があるため、駅名だけで決めないほうが安全です。
Q. 中野富士見町は乗り換えが多くて不便?
A. 中野坂上での乗り換えは確かに多いです。ただし新宿方面はかなり近く、池袋方面への直通列車や新宿行きバスも使えます。一本で行けるかどうかより、複数の交通手段を許容できるかで評価が決まる街です。
出典: SUUMO 中野富士見町駅の賃貸マンション家賃相場、警視庁 令和7年 区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数


